アップスキリングとリスキリングの違い
- Ayaka Fuji

- 8月5日
- 読了時間: 9分
更新日:8月14日

アップスキリングとリスキリングの違いとは?企業がいま取り組むべき人材戦略
近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速やグローバル市場での競争激化により、企業が直面する課題は複雑さを増しています。中でも大きなテーマとなっているのが、「人材のスキル不足」と「変化への適応力の強化」です。
こうした変化に対応するため、企業は社員一人ひとりのスキル開発にこれまで以上に力を入れはじめています。中でも注目されているのが、「アップスキリング」と「リスキリング」という2つのキーワードです。
両者はいずれも社員のスキル向上を目的とした取り組みですが、その意味や目的、アプローチには明確な違いがあります。
本記事では、「アップスキリングとリスキリングの違い」をわかりやすく解説し、企業がDX人材を育成し、組織の競争力を高めるためにどのような戦略をとるべきかを考察します。
アップスキリングとは?
アップスキリング(Upskilling)とは、現在の業務に必要なスキルや知識を高めることを指します。社員が今の職種の中で能力を高め、より専門性を持って業務に取り組めるようになることを目的としています。
例えば、マーケティング担当者がAI活用によるデータ分析スキルを習得し、現在のマーケティング業務に活かせるようにするという場合、アップスキリングの一例と言えます。
アップスキリングでは職種自体は変わらないため、従業員は今のキャリア領域に留まりつつ、専門性をさらに深化させ、業務パフォーマンスを向上させることができます。
今日のように技術革新のスピードが速い時代では、せっかく身につけたスキルでもあっという間に希少性が薄れ、求められるレベルも上がっていくため、自分の持っている知識や経験を基に、さらに技術や能力を強化し、継続的に学び続けるアップスキリングの重要性は増す一方です。
アップスキリングは社員のキャリアアップを後押しするだけでなく、企業にとってもイノベーションの創出や業務の効率化、組織全体の競争力強化につながる取組みです。
リスキリングとは?
一方でリスキリング(Reskilling)とは、新しい職務や分野に対応するために、ゼロから新たなスキルを学び直すことを意味します。現在の仕事で培ったスキルセットから大幅に方向転換し、必要とされる"新領域"の能力を身につける「学び直し」です。
例えば、先述のマーケティング担当者が、今度はプログラミングを学び、ITエンジニア職に転身するといったケースは、典型的なリスキリングに当たります。
近年、AIや自動化の進展により既存業務が変化・縮小する中、企業は社員をただ雇用し続けるのではなく、新たな役割へと再配置するリスキリングの必要性に迫られています。
リスキリングによって従業員は自身のスキルの幅を広げ、たとえ職務内容が変わっても社会から求められ続ける人材になることができます。
一方、企業にとっても、従業員の新たなスキル習得は組織の変革や新事業への対応力につながり、結果として会社の維持・成長の原動力となるというメリットも挙げられます。
このように、リスキリングは社員にとってはキャリアの選択肢を広げ、長期的に社会から必要とされる人材になるための手段であり、企業にとっては変化に強い柔軟な組織をつくるための基盤でありm従業員と企業の双方にメリットがある、将来への投資とも言えるでしょう。
アップスキリングとリスキリングの違い
アップスキリングとリスキリングは共に社員の能力開発を意味しますが、その目的と方向性が異なります。簡潔に言えば「アップスキリング=現職の強化」、「リスキリング=新職種への転向」です。
アップスキリングとリスキリングの主な違いについて、本記事では3つご紹介いたします。
1 ) キャリアの方向性の違い
前述の通り、アップスキリングは、現在のキャリアパス上で専門性を高めることを意味します。一方、リスキリングは異なるキャリアパス(職種)へ転向するために必要な技能を習得することです。
つまり、目指すキャリアの方向性が「現在の職種の延長線上」にあるのか、「新しい職種」へ移行するのかによって、求められるアプローチが大きく異なります。
2 ) 内容の違い
アップスキリングの具体的な内容は、今の仕事に関連する新しい知識や技術を学び、既存業務に磨きをかけることです。例えば、営業職の社員が、プレゼンテーションやデータ分析手法を習得し、営業スキルを底上げ・向上するのはアップスキリングです。
一方リスキリングでは、営業職がプログラミングを学んで、エンジニア職という異なる職種に転換するといった内容がリスキリングに該当します。
3 ) 社員・企業への効果の違い
アップスキリングにより、社員は現在の職域で専門性を高め、生産性向上や業務の高度化に貢献します。企業は不足しがちなデジタルスキルや先端知識を社内で補完できるでしょう。
リスキリングの場合、社員は新たな職務に就くことで雇用の安定性を高め、企業は急速な事業環境の変化にも社内人材の配置転換で対応できるようになります。
特に、AIによって既存業務の自動化や消滅が見込まれる場合でも、社員を解雇せずに新分野へ再配置することで、人的資源を有効に活用できます。
以上のように、現在のキャリアの延長線上でスキルを高めるのがアップスキリング、異なるキャリアへの方向転換を伴うのがリスキリングです。それぞれ目的は異なりますが、いずれも企業と従業員が変化に適応し、成長し続けるための戦略であり、相互に補完し合う関係にあります。
どちらが優れているということではなく、企業と個人の状況に応じてどちらのアプローチが適しているかを見極めることが重要です。両者を組み合わせて人材戦略を構築することで、変化に強い組織づくりが可能になります。

DX人材教育におけるアップスキリングとリスキリングの重要性
今日の容赦ない技術革新の中、変化のスピードと規模は非常に大きく、近い将来には企業が「現在まだ存在しないスキル」を大量に必要とするとも言われています。
第四次産業革命とも呼ばれるこの変革期に対応するには、現在のスキルを磨くだけ(アップスキリング)では追いつかず、新たな領域のスキルを習得するリスキリングが不可欠だと指摘されています。
実際、デジタル化の波に対応する企業には、リスキリングとアップスキリングの両方が必要であり、これらを組み合わせて人材戦略を立てることが求められます。
世界でもグローバルに進む、スキル変革の波
グローバルな視点でも、大規模なスキル変革への取り組みが加速しています。
たとえば、世界経済フォーラム(WEF)は2020年の年次総会(ダボス会議)において、「2030年までに、世界で10億人により良い教育・スキル・経済的機会を提供するリスキリングする」という目標を掲げ、“Reskilling Revolution”(リスキリング・レボリューション)と銘打った国際的イニシアチブを推進しています。
参考 The Reskilling Revolution - World Economic Forum https://initiatives.weforum.org/reskilling-revolution/home
これは、DX時代において世界規模で人材のスキル再構築が喫緊の課題であることを示しており、各国の企業や政府が連携して取り組むべき優先事項として認識されています。
日本におけるDX人材育成の動き
日本においても、DX人材教育への関心が高まっています。
2018年には政府主導でAI・IoT・ビッグデータ等の高度デジタル技能を習得させる「第四次産業革命スキル習得講座(いわゆるReスキル講座)」が開始され、2020年に経済産業省が公表した「人的資本経営の実現に向けた検討会報告書(人材版伊藤レポート)」でも、人的資本経営を実践する上でリスキリングの重要性が強調されました。
参考 第四次産業革命スキル習得講座認定制度 - 経済産業省https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/reskillprograms/index.html
これらの動きは、企業が持続的に競争力を保つためには、社員一人ひとりの能力開発が欠かせないという共通認識を表しています。リスキリングを重視した国家レベルの政策が、既に始まっているのです。
人的資本経営とスキル戦略:スキル開発トレーニングは企業の未来への投資
DX時代において企業が生き残り、成長し続けるためには、人材こそが最も重要な資本=「人的資本」である、という視点が欠かせません。
社員一人ひとりのスキルや知見を戦略的に育成・活用する「人的資本経営」が、いま注目を集めているのです。
経営陣にとっては、必要なスキルを社内で育成するか、外部から調達するかという判断も重要です。外部採用には時間やコスト、カルチャーフィットのリスクが伴う一方、既存社員の育成は持続可能かつ組織全体の底上げにつながる有効な手段です。
とはいえスキル開発を個人任せにするのではなく、企業が学習の機会と環境を整え、全体として底上げを図る仕組みづくりも重要です。「時間が足りない」「個人トレーニングは高額でハードルが高い」といいた時間や費用の面で学び直しが難しい人も含めて、企業側が積極的支援することが、長期的な企業価値の向上につながります。
法人向けトレーニングを活用した戦略的なスキル開発
効果的なアップスキリング・リスキリングのためには、自社内の教育体制だけでなく、専門機関が提供する外部研修も活用することが重要です。
たとえば、以下のようなステップでスキル開発を計画・実行することが推奨されます。
経営戦略に基づいたスキル特定: 事業の方向性と照らし合わせ、どの職種・部門にどのようなスキルが必要かを明確化します。
多様な研修手法の活用: 集合研修、オンライン講座、eラーニングなど、社員のスタイルや業務に合った形式を選びます。
社員のキャリア目標と連動: 一方的な押し付けではなく、本人の成長意欲と整合させた設計にすることで、内発的な動機づけが可能になります。
学習時間の確保: 就業時間内に学びの時間を組み込むことで、スキル習得の「時間的障壁」を解消します。
研修成果の実務適用: 研修で学んだ内容をすぐに現場で試せるプロジェクトや業務にアサインすることで、定着率と実践力を高めます。
このような体系的な学習設計と継続的支援が、真に意味のあるスキル開発を可能にします。
NobleCampsのビジネスブートキャンプ・トレーニングで実践力を高める
NobleCampsでは、企業の変革と成長を支援するカスタマイズ型法人向けトレーニングを提供しています。
当社のビジネスブートキャンプは、実務に直結する課題に取組みながら、
課題解決力
デジタルリテラシー
戦略的思考力
など、今まさに求められるスキルを短期間で習得できる実践型トレーニングです。
通常10日間のカリキュラムですが、業種・人数・研修目的に応じてカスタマイズ可能。日本語・英語の両方に対応しており、グローバル展開を視野に入れた組織にも適しています。
私たちNobleCampsは、人的資本を未来への投資と捉える組織のための“学びのパートナー”です。
スキルギャップに課題を感じている
DX人材育成に本格的に取り組みたい
組織の企業研修プログラムや社内トレーニングを見直したい
そんなご担当者様は、まずはお気軽にご相談ください。 法人向け研修のご相談・お見積もりは、こちらから。



